会社勤めをしていると、自分の思うように仕事が進められなかったり、職場の人間関係に振り回されてしまって心も身体も疲れてしまうことがあります。ある程度のストレスやプレッシャーは必要なものだとはわかっていても、時々どうしても限界を超えてしまうことがあります。超えてしまうと、身体に色々な症状が出て、会社に行けなくなったりしますよね。私もその経験があります。
しかし、いざ長期的に会社を休むとなると、何をどうすればいいのかわからなくなってしまうことがあると思います。
特にまだ20代とかだと、貯金も心許なかったり、初めての体調不良だったりと不安なこともたくさん。
そこで今回は、実体験を元に休職するときにやったことをまとめてみました。
休職前までの私
私が休職するきっかけになったのは「うつ病」でした。ある日突然朝起きた時にふと会社に行きたくない、と思ったのです。取り敢えずその日は有給休暇を取得し、しばらく休むことにしました。
数日経っても調子は良くなりません。それどころか、腹痛や頭痛、食欲が無くなるなんて症状も出ました。胃薬を病院で貰って飲んでいたのですが、変わらず。検査機械を色々使ってもらって調べたんですが特に”コレ”という異常は明らかにならなかったのでした。その時診察した医師が、「もしかしたら心が疲れている可能性も……」と漏らしたのが、メンタルクリニックに通うきっかけになりました。
これまでの人生でメンタルクリニックにはとんと縁がありませんでした。病気知らずだったのです。Googleで適当に検索して、休日でも(その日はたまたま週末だった)診察してもらえる場所を近所で探しました。
そのメンタルクリニックはあるビルの1フロアにあるということで、恐る恐る入りましたが、綺麗なところでした。どことなく気持ちが穏やかになりそうな雰囲気や香りを醸している気がします。簡単な問診票をその場で書き、診察を受けると「うつ病」と言われました。私は固まりました。上司に説明するまで3日悩みました。
うつ病は確かに聞き慣れた名前ではありますが、普段病院知らずな私としては「特殊な病気」だという認識が拭えなかったのです。誰でも怪我をすれば病院に行きますし、風邪やインフルエンザなんかでも行きます。画面の向こうでのみ流行していると思っていたそれが、急に自分にやってきたのです。驚きました。
上司に説明するのも相当勇気が必要でした。上司は元々優しい上にとても賢い人です。急に「うつ病」なんて説明して、迷惑になるのではないだろうか、とそういうモヤモヤした感情がぐるぐる回った3日でした。3日悩んで、このまま放っておいても仕方がないと思い、メールを送りました。口頭で説明するには難しいと思ったからです。
やっぱり優しい上司はすぐに返事をくれました。「わかった。しばらく様子を見ましょう」。こうして、私の治療生活が始まったのでした。
休職になるまで何をしたか
前置きが長くなりましたが、当時の私は上記のような感じでした。治療と並行して、色々考えなければなりませんでした。最初にやったのは次の4つです。
- 診断書の発行依頼…①
- 健康保険組合への連絡…②
- 入っている保険の確認…③
- 資金繰りの見直し…④
①の診断書依頼は早々に済ませる必要がありました。私の勤めている会社には、有給休暇とは別に病気休暇の制度が就業規則で定められていました。病気休暇期間は無給になりますが、この制度を使うことで有給休暇を闇雲に消費しなくても良くなります。しかし、病気休暇を申請するには診断書が必要とのことだったので、次に診察に行った時に診察医にお願いをしました。
診断書はその場で書いてもらえたので、そんなに時間はかからないと思います。
②は健康保険組合に登録している現住所の確認でした。私の勤めている会社には健康保険組合があり、入社時に(恐らく)全員が加入しています。入社時から何度か引っ越しをしていたので、今の住所と違っていたらまずいなと思い連絡しました。結果、違う住所だったので変更の手続きをしました。
会社によっては健康保険組合が企業単位・グループ企業単位であるところや、業界単位、公務員は共済組合であったりすることがあるので、自分がどの健康保険組合なのかを知っておいたほうが良いと思います。
③特に大企業に勤めているとありがちですが、社内に保険会社の営業さんが来て色々な保険勧誘をしてきます。私はたまたま別件で傷病関係の保険に加入していたので、もしかして今回も使えるかもしれないと思い確認してみました。「うつ病」も保険が下りるという話だったのですが、「訪問診療」であることが条件でした。私は病院に行って診察を受けているので対象外ということでした。保険を解約してやろうかと思いました。
これから保険に入る人は、どういう条件で支給されるかをよく確認してみてください。
④資金繰りの見直しは、誰もが気にするところだと思います。自営業やフリーランスとは違い、会社に勤めているとなんとなく毎月指定日に給料が入ってくるので、それが突然失われるというのは通常会社が倒産でもしない限りはなかなかありません。幸いにして、これまで働いてきた分の貯金がありましたので、それを崩すことにしました。
後に知る、傷病手当金の制度を活用するまでは……。
病気休暇から休職へ
しばらくは病気休暇で凌いでいましたが、病気休暇の日数上限に達してしまいました。そして、遂に「休職」という扱いに変わりました。たまに調子はどう? とメールをくれる上司にありがたみと煩わしさを感じつつあった私でしたが、この頃私は、生活苦を感じ始めていました。貯金が少しずつ減ってきて、心も落ち着きません。
ある時の診察で、診察医に相談してみました。
「先生、生活がちょっとヤバくなってきたんですよ・・・・・・」
すると診察医は一言。「傷病手当金の申請をしたら?」 そう、これこそが傷病手当金と私の出会いでした。
傷病手当金とは
傷病手当とは、健康保険法第99条で定められているもので、要約すると病気で休業している健康保険加入者に対して給付金が支給されるという制度です。何が凄いかと言うと、この制度は法律で定められているということです。つまり、国民皆保険と言われる日本に住んでいる、健康保険組合に入っている人は須らく受け取ることが出来るのです。
第九十九条 被保険者(任意継続被保険者を除く。第百二条第一項において同じ。)が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
e-Gov法令検索(健康保険法)より引用 https://elaws.e-gov.go.jp/
(中略)
4 傷病手当金の支給期間は、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病に関しては、その支給を始めた日から起算して一年六月を超えないものとする。
支給額は、休業までの直近12ヶ月間の標準報酬月額の平均を30で割った金額(およそ日額)の3分の2、かける日数分です。ざっくりといえば、月収の66%程度が最大で1年6ヶ月の間支給されるんです。計算式を下に置いておきます。
計算式(30日休業した場合の例 ※待機期間を除いた場合)
(休業前12ヶ月分の平均標準報酬月額) / 30(日数) × 2/3 × 30(休業日数)
66%って少ないと思いましたか?
でもこれが貰えるとわかっただけで私は気が楽になりました。どうせ調子が良くないので、健康な時のように頻繁に外食したり出かけたりするわけでもありません。支出が減るのは必定です。
標準報酬月額なんて、毎月の給与明細の片隅にちょこんと書かれていて、その癖ちょっと給料が増えるとすぐ反映されて月に払う保険料が上がってしまう悪魔の数字だと思っていましたが、こんな時のためにもあるんですね。
傷病手当金の申請
傷病手当金を受け取るためには申請書を書く必要があります。私の場合は、自分の加入している健康保険組合のホームページにフォーマットがあったので、それを印刷して記入しました。
フォーマットには受給者(私)と医者(診察医)と職場長(会社の上司:総務系の場合もある)が書く欄があるので、私は自分で書いた後に診察に行き、診察医の書くべき所を書いて貰った後に職場に提出しました。それから2-3週間後に、自分の銀行口座にまとまった金額が振り込まれていました。傷病手当金バンザイ!
注意点
- 自分で情報を取りに行かなければならない…①
- 申請してから振り込まれるまでに待つ期間がある…②
- 申請を忘れない…③
①これは想像がつくと思うのですが、このルールを全員が必ず知っているとは限らないということです。
私の上司に、担当医の書いてくれたフォーマットを渡した時に「こういう書類があるんだ」と漏らしていました。自分が経験していなければ当然書く機会もありませんから、知らなくてもおかしくないです。
総務や人事系の部署で働いていればまた別だと思いますが、多くの人はそれ以外の部署で働いていると思います。なので、「何で上司知らないんだ、隠してるのか?」なんて邪推するのはやめてあげてください。
②私の経験の時にも書きましたが、申請フォーマットを会社に提出してから2-3週間のタイムラグがありました。特に初回の申請の時には内容を細かく確認したりするために時間がかかるケースがあるようです。とはいえ、流石に1ヶ月経っても音沙汰が無ければ、自分の加入している健康保険組合の窓口に1度問い合わせてみた方が良いと思います。状況を丁寧に教えてくれると思います。
③これは健康保険組合によってルールが違うかもしれないのですが、定期的に申請書を出す必要がある場合もあります。私は毎月提出することになっているので、そうしていますが、健康保険組合のホームページなどを確認しておいたほうが良いでしょう。
定期的に提出する理由は、いつまで休業になっているかを健康保険組合が把握しているわけではないからだと思うのですが、そこまでは確認していないので不明です。
最後に
傷病手当金は「うつ病」に限った話ではありません。何らかの病気や怪我で休業しなければならなくなった社会人のお助けアイテムです。懐が暖かくなると、心の平穏が戻ってくるので、きっと回復も早くなることでしょう。
しっかり制度を活用して、治療に専念しましょう!