フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏が著書『21世紀の資本』でr>gという不等式を示しました。
これは、r(資本収益率)がg(経済成長率)より大きくなると言うことを示しています。
つまり、資本(資産)を持つ者の収益率のほうが、労働(経済成長)による収益より大きくなるということを言っており、すなわち富めるものはますます富み、資産を持たない者との格差がどんどん大きくなっていくことを示したものです。
さて、ここまで面倒な前書きをしました。この不等式は当時大々的にメディアにも取り上げられ、世界中の格差拡大に対して物申す人が現れたり、意識の高い人向けの資産運用をすすめるビジネス書が世に蔓延りました。
お金、という単位について言えば上記の通りなのですが、これは他のことにも言えると思いますので、そんな一例を紹介。
1.Youtuber
存在が珍しくなくなったYoutuber。身の回りにもちょっとした動画を投稿している人がいたり、そうでなくとも1日1本は動画を視聴しているという人もだいぶ多くなっているのではないでしょうか。
動画を投稿する人をYoutuberといいますが、これもr>gの法則が発生していると思います。即ち、「動画本数」=資産とみなすと、動画の本数が多ければ多いほど、動画の再生数が伸びるということです。
普段からご覧になっている方はお察しかと思いますが、Youtubeでは1本の動画を見た際に、その動画を投稿している投稿者の別動画がおすすめされるというシステムになっています。(もちろん、関連した別投稿者の動画がおすすめされる場合もありますが)
一般的に動画を見る人は次の手段によって動画とマッチングします。「検索」「急上昇などのサイト内ランキング」「登録しているチャンネルの新着」「1件動画を見た後のおすすめ・自動再生」etc…
検索や急上昇については投稿者の技量だけによらない不確実性がありますが、「登録しているチャンネルの新着」や「おすすめ・自動再生」については動画本数が増えるごとに自分のチャンネルの別動画への流入口を作ることになるので、動画本数が増えることにより再生数が増えやすいという根拠になります。
もちろん、これはいわゆる「バズる」によらない場合の話ですので、じわじわ再生数を伸ばしていくタイプのチャンネルはこうなるかなと思います。
2.検索能力
2つめは検索能力です。
検索能力ってなんだ、という話ですが、簡単に言えば「知識収集能力」とでも思ってください。
インターネットが普及した昨今、頭の中に知識を詰め込まなくても都度「検索」を行うことで、効率的に生活できるという論調が強くなっています。果たして本当にそうでしょうか。
Amazonで物を買うと、関連商品をレコメンドで示してくれるし、電子書籍のサイトも「この本を買った人はこちらも買っています」と教えてくれる。TwitterやInstagramなどでフォローしている人が新商品を紹介してくれて、それを見る。便利になりました。
さて、こうした情報をGoogle検索ページでキーワードを入力して調べることは可能でしょうか。
可能だよ、という方は大したものです。私は、困難だと思います。
どういうキーワードで検索すれば求める結果が返ってくるのか、それは元々検索する自分自身による「キーワードの推察」が出来なければならないのです。
キーワードを推察するには、過去に何らか見たことがあって似たような言葉を記憶しているか、記憶と記憶の組み合わせによって「キーワードを生み出す」ことが必要です。
つまり、土台が必要なのです。
このまま検索文化・SNSシャワーの普及が進めば、興味のある情報のキーワードは得られますが、それ以外の物はよく知らない「いわゆる深く狭い知識しか持たない」人間が溢れてしまうことでしょう。
そうした時、常に興味を外に外に広げられる、「検索能力」rを持つ人こそが、豊かに生きていけるに違いありません。
自分が「深く狭い知識しか持たない」と感じているのであれば、ぜひその殻を破って進んでもらいたいです。
インターネットは「知っている人に対しては無限の知識の宝庫」ですが、知らない人には「無限の闇」にしか見えないと思います。
ほかにもきっと、持つものがより持ち、持たないものはより持てない時代を示すものがあるはずです。
r>gを身近に感じて、ぜひ主体的に生きていってください。